英日部門
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ファイナリスト
J18 柴田 勇
地球の健康
生物多様性が失われるのが心配? 食料に注目。
真水の供給と水質が心配? 食料に注目。
森林伐採が心配? 食料に注目。
魚の乱獲が心配? 食料に注目。
気候変動が心配? エネルギーと食料に注目。
世界資源研究所 リチャード・ウェイト 2021年4月
食料システムの構造的欠陥の話をする前に、その素晴らしい功績について考えてみよう。このシステムのおかげで、私たち何十億もの人間が食べていける。これまでにないほど多くの人間がその恩恵にあずかっているのである。
16ページの2つの図は、人間が自分たちの食料を自分たちの手で生産しはじめて以来、いかに繁栄してきたかを表している。図1.1は、紀元前1万年における地球上の人間と、陸上に住む野生の脊椎動物(哺乳類と鳥類)の推定生物量を表している。完新世の始まりで、地球の気温がそれまでにない安定期を迎え、農業が可能になった頃である。この時、地球の人口は250万で、野生動物の膨大な数と比べるとひどく見劣りのする数字である。
図1.2は今日の状況を表している。人口は78億にまで膨れ上がっている。野生動物の生物量は激減したが、その原因は、人間による大型動物相の乱獲(これは人間が引き起こした最初の大量絶滅につながる)、生息地の破壊、汚染、環境損害などである。人間がペットとしてあるいはレジャーのために飼っている動物は、地球上の野生動物と鳥類を合わせた生物量とほぼ同じ重量になっている。
繁栄によって新たな問題が浮上してきた。増加した人口のために食料を確保しなければならない。地球上の居住可能地域の約50%は現在農業に使われている。肉や乳製品を口にしたいという欲求は地球資源の酷使に繋がっている。世界の農地の77%は家畜の牧草地や、家畜のための食料生産地として使われている。(図1.3)食料として飼育されている動物の総重量は、すべての野生の哺乳類と鳥類の合計重量の10倍になっている。
J27 Nobuhiro Sato
地球の健康
生物多様性の喪失が心配? 食料に注目しよう
淡水の供給と品質が心配? 食料に注目しよう
森林破壊が心配? 食料に注目しよう
水産資源の乱獲が心配? 食料に注目しよう
気候変動が心配? エネルギー、そして食料に注目しよう
出典:Richard Waite, World Resources Institute, April 2021
食料システムが持つ不完全な仕組みに踏み込む前に、少し立ち止まって、その素晴らしい成果について考えてみよう。食料システムは私たちを支えている。歴史上かつてなく多い、何十億人もの人口を支えているのである。
16ページにある2つの図は、食料を作り始めてから人類がどれほど繁栄に成功したのかを示している。最初の図は、紀元前10,000年における、人類と陸上の脊椎動物(哺乳類と鳥類)の生物量を推定したものである。この時期は完新世の始まりにあたる。完新世では気温がかつてなく安定し、農耕が可能となった。その時点で地球上には250万人の人類が存在したが、野生動物の数と比較すると非常に少数であった。
図1.2は、現在の状況を示している。人類は78億人に膨張した。一方で野生動物の生物量は枯渇に向かっており、その原因の一部は、人類が盛んに行った大型動物の狩猟(最初の大規模な絶滅は人類によって引き起こされた)や生息地の破壊、環境に与えた汚染やダメージである。人類の増加と野生動物の減少により、いまや人類がペットや娯楽用に飼育する動物の重量(緑の円)は、野生の哺乳類と鳥類を合わせた重量と同等である。
人類の成功には課題も伴う。それは、私たち人類が多くの食料を必要としている、ということである。現在では地球上にある居住可能な土地のうち約50%が農地として使われている。そして特に、肉類や乳製品に対する需要が地球の資源に多大な負荷を与えている。先に述べた農地のうち、77%が家畜の放牧や飼料作物栽培のために使われているのである(図1.3参照)。このようにして食用に飼育された家畜の重量は、いまや野生の哺乳類と鳥類を合わせた重量の10倍にも達している。
J56 Moeka Kiyohara
地球の健康
生物多様性の損失に不安を感じていますか? なら、食料に目を向けましょう。
真水の供給や水質に不安を感じていますか? なら、食料に目を向けましょう。
森林破壊に不安を感じていますか? なら、食料に目を向けましょう。
過剰な漁獲量に不安を感じていますか? なら、食料に目を向けましょう。
気候変動に不安を感じていますか? なら、エネルギーと食料に目を向けましょう。
―リチャード・ウェイト, 世界資源研究所(WRI), 2021年4月
食料システムの構造の問題について話す前に、その驚くべき功績について少し考えてみましょう。食料は私たちの生命を支えています。地球の人口はいまだかつてないほど増加しており、今では何十億という数の人類が食料に支えられて生きています。
16ページの2つの図表は、人類が自分たちで食料生産を始めて以来、どれほど順調に繁栄してきたかを表しています。図1は紀元前10,000年における地球上の人類と野生陸上脊椎動物(哺乳類・鳥類)の推定バイオマスを示したものです。完新世の始まりでもあったこの時代には、地球の温度がそれまでにないほど安定したことで農業が可能になりました。この時代の地球の人口は250万人で、巨大な野生動物のバイオマスと比較すればほんのわずかであったことが分かります。
続いて図1.2は現在の状況を表したものです。図1で250万人だった人口は、78億人にまで膨れ上がりました。反対に野生動物のバイオマスは減少していますが、その理由には人類によるメガファウナ(大型野生動物)の大量狩猟、生息地の破壊、汚染、環境破壊が含まれます(メガファウナの狩猟は、人類が原因となった最初の大規模絶滅です)。また、人類がペットや娯楽のために飼育している動物のバイオマス(緑の円)は、今や地球上すべての野生哺乳類や鳥類を合わせたバイオマスにほぼ匹敵することが分かります。
成功は同時に問題を生み出します。多くの数の人類と生物を養うだけの食料が必要だという問題です。今や地球上の居住可能地のおよそ50%が、人類の農業生産活動に使用されています。中でも、肉類や乳製品を食べたいという私たちの欲求は地球の資源に特に大きな負担をかけており、地球上の農地の77%が畜産動物の飼育や飼料生産に使われています(図1.3参照)。食用に飼育されている動物のバイオマスは、今では野生の哺乳類・鳥類をすべて合わせたバイオマスの10倍にもおよびます。
J67 Chizuko Kamei
地球の健康
生物多様性の喪失が心配なら、 食べ物に注目してください。
淡水の供給量や水質が心配なら、 食べ物に注目してください。
森林破壊が心配なら、 食べ物に注目してください。
魚の乱獲が心配なら、 食べ物に注目してください。
気候変動が心配なら、 エネルギー、そして食べ物に注目してください。
世界資源研究所 リチャード・ウェイト、2021年4月
フードシステムの欠陥構造について取り上げる前に、その驚くべき成果について少し考えてみましょう。このシステムによって、私たちの食は支えられています。何十億人もの、史上かつてないほど多くの人間が、そこから食料を得ているわけです。
16ページの2つの図は、人類が自分たちの手で食料の栽培、飼育を始めて以来、どれほど繁栄してきたかを物語っています。最初の図は、紀元前1万年の地球における人類と野生の陸上脊椎動物(哺乳類と鳥類)の推定生物量を表しています。紀元前1万年といえば完新世の始まった頃で、地球の気温がかつてない安定の時代に入ったため、農業が可能となりました。この時点で地球上に人類は250万人。野生動物の多さに比べれば、ほんのわずかな数でした。
図1.2は現代の状況を示したものです。人類は78億人にまで増加しました。一方、野生動物の生物量は大幅に減少しましたが、その原因の一部として、人類が大型動物を狩るのに熱心だったこと(人類に起因する最初の大量絶滅)に加えて、生息地の破壊、汚染、環境被害が挙げられます。今では、ペットとして、また娯楽のために飼育されている動物(緑の円)の重量は、地球上の野生哺乳動物と野鳥をすべて合わせた重量に匹敵するほどとなりました。
しかし、成功は新たな問題の原因ともなります。大勢の人間の食料を賄う必要があるため、地球上の居住可能な陸地の約半分が農業に使用されるようになりました。地球資源にとりわけ負担をかけているのが肉類や乳製品に対する私たちの欲求であり、世界の農地の77%が動物の放牧や、動物に与える穀物の生産に使用されています(図1.3参照)。現在、食用に飼育されている動物の総重量は、野生哺乳動物と野鳥をすべて合計した重量の10倍にも上ります。
J88 神尾 智
健康な地球とは
生物多様性の損失が気になる? ――鍵は食料。
水質と供給が気になる? ――鍵は食料。
森林破壊が気になる? ――鍵は食料。
生物の乱獲が気になる? ――鍵は食料。
気候変動が気になる? ――鍵はエネルギー、そして食料。
世界資源研究所 リチャード・ウェイト 2021年4月
食料生産システムにおける構造的欠陥に踏み入る前に、まずはその目覚ましい功績を振り返ってみましょう。つまり、食料の供給です。何十億という、歴史上かつてない規模の人類への。
16ページの2つの図は、農業による食料の生産が始まってからの人類が、いかに繁栄を遂げてきたかを如実に表しています。1つ目の図が示しているのは、紀元前1万年ごろの地球における人間、および野生の陸上脊椎動物(ただし、哺乳類と鳥類に限る)の推定生物量です。完新世の始まりにあたるこの時代、地球の気温は史上初の安定期に入り、農業が可能になりました。この時点での世界人口は250万人で、圧倒的な数の野生動物に比べれば霞んで見えます。
図1.2が表しているのは今日の状況です。人口は78億にまで膨れ上がりました。野生動物の生物量が縮小しているのは、大型動物の熱狂的な狩猟(人類による初の大量絶滅を引き起こしました)、生態系の破壊、汚染や環境破壊も要因となっています。人類の飼育下にあるペットやレジャー用などの動物(緑の円)は、重量で比較すれば、現在では野生の哺乳類・鳥類すべての合計に匹敵します。
ですが、成功の陰では常に、数々の問題が育まれています。我々は、食べる口を抱え過ぎたのです。地球上で居住可能な土地のおよそ50%が、今では農業に使われています。とりわけ地球資源への負担となっているのは、肉や乳製品に対する人間の欲求です。世界の農地の77%は、放牧、または動物用の餌を作るためのものです(図1.3)。現在、食用として飼育されている動物の総重量は、野生の哺乳類・鳥類を合計した10倍にも上ります。
2位 J71 伊藤 泉帆
地球の健康
生物多様性の喪失を案じていますか?食料に注目しましょう。
淡水の供給と質が気になりますか?食料に注目しましょう。
森林伐採を懸念していますか?食料に注目しましょう。
魚の乱獲が不安ですか?食料に注目しましょう。
気候変動が心配ですか?エネルギー、そして食料に注目しましょう。
リチャード・ウェイト、世界資源研究所(2021年4月)
「食料システムの構造がうまく機能していない」という議論に入る前に、まずはその驚くべき成果について考えてみましょう。私たちは食料システムのおかげで、何十億人というかつてないほど多くの人々に食料を供給できています。16ページにある2つの図は、人間が農耕や牧畜で自らの食料を生産し始めてから、いかに順調に繁栄してきたかを表しています。図1.1は、紀元前1万年頃に地球上にいたと推定される人間と野生の陸上脊椎動物(哺乳類・鳥類)の生物量を示したものです。完新世の始まりにあたるこの頃、地球全体の気温はそれ以前には見られなかったほど安定した時期に入り、農業が可能になりました。当時は野生動物が非常に多く存在したため、250万という人間の個体数は大変小さく見えます。
図1.2は現在の状況です。人口は78億人まで増加していますが、野生動物の生物量は、メガファウナと呼ばれる巨大動物を人間が盛んに狩猟したこと(人間が引き起こした初の大規模絶滅)や、生息地の破壊、汚染、環境被害などが原因で減少しました。また現在では、ペットとして、あるいは人間の娯楽のために飼育される動物の生物量(緑色の円)が、地球上にいる野生の哺乳類・鳥類すべてを合わせた生物量とほぼ同じです。
成功には、それゆえの問題が伴います。私たちは大勢の人間に食料を行き渡らせなければなりません。そのため、現在、地球上で居住可能な陸地の約50%を農業に使用しています。地球の資源に特に負担になっているのが、人間の肉や乳製品に対する食欲です。実際、家畜の放牧や飼料用作物の生産に世界の農用地の77%が使われています(図1.3参照)。食用に飼育されている動物の総生物量は、今や野生の哺乳類・鳥類すべてを合わせた生物量の10倍に及びます。
1位 J79 大橋 響
地球の健康
生物多様性の喪失が心配ですか?食料に注目しましょう。
良質な淡水の供給が心配ですか?食料に注目しましょう。
森林破壊が心配ですか?食料に注目しましょう。
過剰漁獲が心配ですか?食料に注目しましょう。
気候変動が心配ですか?エネルギー、そして食料に注目しましょう。
Richard Waite(世界資源研究所)、2021年4月
食料システムが持つ問題点に触れる前に、そのとてつもなく大きな成果にも目を向けてみましょう。
それは、私たちが食料を得られているという事実です。数十億にも及ぶ、史上最大数の人間の食料が賄えているのは、食料システムのおかげなのです。
16ページにある2つの図は、農耕・牧畜の開始以来、いかに人間が順調に繁栄してきたのかを示しています。1つめの図は、紀元前10,000年時点での、人間および野生の陸上脊椎動物(哺乳類と鳥類)の推定生物量です。紀元前10,000年といえば、完新世の始まり。地球の気候がかつてないほど安定した時代を迎えたことで、農業が行えるようになった頃です。この時点での地球上の人口は250万人と、極めて多数の野生動物と比べるとわずかな数に過ぎませんでした。
図1.2は、今日における状況を示しています。人口は78億にまで増加しました。一方で野生動物の生物量は、かつての規模と比較して大幅に縮小しており、その要因として、人間によるメガファウナの乱獲(人間が引き起こした最初の大量絶滅)、生息地の破壊、環境汚染、環境破壊も含まれます。ペットとして、もしくは娯楽目的で人間により保有されている動物の生物量(緑色の円)と、地球上すべての野生哺乳類と野鳥を合わせた生物量は、今やほぼ同じになっています。
人類は繁栄を遂げてきましたが、それに伴い新たな問題も発生しました。増加した人口に見合う膨大な食料が必要になった結果、地球上の居住可能地のうち、農地の占める割合が約半数にも上っています。さらに、肉や乳製品の需要が地球資源の著しい逼迫を招きました。具体的には、世界の77%もの農地が放牧地として、もしくは飼料作物を栽培するのに使われているのです(図1.3参照)。食品生産用の家畜の生物量は、すべての野生哺乳類と野鳥を合わせた生物量の10倍にも及んでいます。