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Working with Translators

翻訳者とよいチームを組むために


「翻訳」と「通訳」の違い

「翻訳」も「通訳」も情報をある言語から別の言語に置きかえる点は同じですが、「翻訳」では書き言葉を、「通訳」では話し言葉を扱います。この2つは別の技能です(ただし英語では両者を総称して"translation"という言葉を使う場合がありますので、注意が必要です)。仕事を依頼する際には、誤解を防ぐためにも、どちらが必要なのか最初にはっきりとご指定ください。


プロフェッショナルな翻訳者が提供できること

  • 知らない言語で書かれた文書の内容を手の届くものにします。
  • 別の言語による意見表明を可能にします。
  • メッセージの受け手に合った一貫性のある文体と用語を使って、精度の高い、プロフェッショナルな文書を作成し、貴社・貴団体のイメージを高めます。
  • 粗悪な翻訳が貴社の評判や製品・サービスにダメージを与えるのを防ぎ、製品やサービスの販売を支援します。
  • ミスのない文書を納期どおりに提出し、コストを節約します。後になって手を入れる必要が起こり、結果的に高いものにつく、ということがありません。
  • アマチュアとの作業につきものの不安や問題が避けられます。
  • 文化の違いによるコミュニケーション上の問題を指摘できるので、貴社の文書が失笑のもとになる心配がありません。

最終的な文書の質を考えるなら、単に2つの言語に通じているというのではなく、専門家としての技能を持った翻訳者を雇うことが肝心です。

 

すぐれた翻訳者の条件

  • 扱っている外国語に対する造詣
  • 原稿が話題にしていることがらの理解
  • ある言語で表現されている考えを、等しく意味をなす形でもう一方の言語に移しかえる能力
  • 話題および読者に合った言葉を使って平均を上回る水準の文章を目標言語(訳文の言語)で書く力
  • 広範な教養
  • 関係する2つの文化に対する確かな知識
  • 頭の回転の速さ
  • 細部に対する敏感さと注意力
  • 専門用語の理解力、および必要に応じさらに調査することを厭わない態度
  • 訓練あるいは経験

翻訳は、辞書で見つけた単語を文法にしたがって並びかえるだけの機械的な作業ではありません。異なる言語の間では、単語が1対1で対応しない場合がよくあります。例を挙げるなら、ある単語がもう一方の言語では違う感情の動きを示唆することもありえます。このような潜在的な問題に注意を向け、その対処の仕方も知っているのが、プロフェッショナルな翻訳者です。


すぐれた翻訳の条件

すぐれた翻訳の代表的な条件としては、表現が正確かつ明瞭で、論理が通っていることが挙げられます。加えて、言葉の調子やレベルがフォーマル度・専門性に見合ったものでなければなりません。納期に間に合うことも肝心です。しかし何より大事なのは、求められる機能を訳文が果たすかどうかです。法廷で使われる翻訳の場合、ぎごちない箇所が多少あっても正確性が最優先されるべきです。一方出版用の文章では流れのよさが命です。翻訳を依頼する際には、ニーズは何か、訳文が何に、また誰のために使われるのか、さらにどのような仕上げを期待しているのかを、翻訳者に知らせてください。ちょっとしたことですが、これで余計な出費とご不満がかなり防げます。すぐれた訳文確保の一助ともなります。


翻訳者は2つの言語の両方でよい訳文が作れるか

2つの言語を流ちょうに話せたとしても、その両方で等しくすぐれた訳文が書けるとは限りません。文法的に正しく、表現力も十分なよい文章を書くには特別な技能が必要で、その言語について会話力以上の習熟が求められるからです。一般に、自分の母語に訳している翻訳者の方が、文法上の誤りが少なく、目標言語・市場に適した文体の訳文を提供できる可能性が高いと言えます。逆に、母語から訳している翻訳者は、原稿の読み違いが少ない一方、文法上の誤りを冒す可能性が高く、使いこなせる構文や表現も限られがちです。もちろん、母語以外の外国語で優れた文章力を発揮する人も中にはいますし、母語においても解釈を誤ることなどあり得るでしょう。また分野によっては、目標言語を母語とし、内容を理解するのに必要な専門知識を持つすぐれた翻訳者を見つけるのが文字通り不可能な場合もあります。
 

翻訳の料金

翻訳の料金の高さに驚く依頼者がたまにいます。ここで思い出していただきたいのは、優秀な翻訳者は単に2つの言語に通じているだけでなく、金融や法律、各科学技術分野など、特定の領域にしばしば専門的な知識を持つ、高度に経験を積んだ専門家であるという点です。翻訳者は一定の分野を専門にしている場合が多く、その分野の読書に長時間費やし、さらに深い知識の獲得に努めています。翻訳の訓練を高等教育レベル、しばしば大学院レベルで受けている場合もあります。翻訳の作業はきわめて入り組んでおり、知力を使うという意味でもまたかかる時間の上でも労力を要します。つまり技能や知識、受けた訓練に見合った水準の報酬が翻訳者に支払われる必要がある、ということです。翻訳者の条件を満たさない人に発注し節約しようとしても、誰か別の人に修正を依頼することになれば、長期的に見てコストおよび時間が余計にかかります。料金が安いと高品質な翻訳を作ろうとする翻訳者の意気がくじかれがちです。

翻訳者は通常、原文の長さまたは訳文の長さを元に料金を請求します。料金計算の単位は翻訳者により異なります。(1語、100語、1,000語、文字数、バイト数、行数、ページ数など。所要時間による支払いや一括請求、または印税による場合もあります。)したがって、最初に翻訳者に確認するとよいでしょう。

翻訳のレートは内容・専門性・納期・各国の市場、さらにどちらの言語からどちらの言語への翻訳かにより変わってくるので、相場というものはありません。日本での日本語から英語への翻訳の場合、ページ単価でだいたい3,000円から10,000円強です。英語から日本語の場合、出来高400字あたり2,000円前後から5,000円程度です。単価と品質は概ね比例します−−ことわざに「安物買いの銭失い」とある通りです。

短い仕事については1件あたりの最低限度額が適用されたり、急ぎの仕事や週末または祝日にかかる仕事に関しては割増料金が適用される場合があります。長時間の調査を要する仕事、また体裁が複雑で仕上げに時間がかかる仕事の場合、単価はときおり時間単位になります。料金の見積りは無料ですが、その際翻訳者が全体の原稿、または見本として最低2、3ページに目を通せるように計らってください。
 

翻訳にかかる時間

翻訳には、単に文章を入力するよりずっと長い時間が必要です。納期を決める要素としては、文書の長さ、難度(専門用語の数、内容の入り組み具合、調査の要・不要、原文を編集する必要があるかどうか、など)、翻訳者の能力およびその分野に対する専門知識、その時点でかかえている仕事量があります。このことをふまえた上できわめて大雑把な目安を出すなら、1日10ページが無理のない線です。特定の分野の仕事だけをしている翻訳者なら数値はこれより大きくなるでしょうし、専門性の高い文書の場合かかる時間が長くなります。不明点の解決や必要な調査、草稿の見直し・修正、さらに条件にしたがい文書の体裁を整えるのにかかる時間にもご配慮ください。また、急ぎの仕事は料金が割増になる旨了解をお願いします(25%から100%)。

 

原文の改変

一語一句対応させた逐語訳では意味やニュアンスが原文からずれがちです。文字通り変な文章になったり、また意味の通らない文章になる可能性もあります。そこで翻訳者は、原文の意図をよりよく伝えるために、文章をある程度自由に起こす場合があります。さらに、言語はその言語が使われている文化を投影するものであり、例えば、日本社会ではそれで通る言い回しも、そのまま英語にすると不適切に聞こえる可能性があります。そこで翻訳者は、訳文の効果を高めるため、原文の一部割愛または補足、あるいは全体の書き直しなど、場合により手直しを加えたり、原文の変更を提案することがあります(自由な処理がどの程度まで許されるのか、依頼者から指示があってしかるべきところです)。最終的な判断は顧客である貴社・貴団体次第ですが、両方の文化に通じた翻訳者の助言は、言語・文化の違いによる誤解を防ぐために参考になるでしょう。

 

訳文のチェック

訳文の言語が母語ではない翻訳者に発注する場合、特にその翻訳が外部に発表するためのものであるときは、できあがってきたものをその言語を母語とする人にチェックしてもらうか、あるいは翻訳者に対し納品に先立ち訳文のチェックをその言語を母語とする人に依頼するよう要求することをお勧めします(通常その分を含めた料金の見積りが可能です)。誤りのない、簡潔・明解な、流れのよい文章の確保に役立ちます。

訳文を母語とする翻訳者に頼んだ場合でも、その翻訳者の信頼性および能力がはっきりしない場合、信頼性・文体・用語のチェックを別の人に依頼する方がよい場合もあります。チェックは必ず経験豊かな翻訳者または編集者に依頼し、その際翻訳者に与えたのと同じ情報を提供するようにしてください。2つの言語を流暢に話せても、プロの翻訳者の仕事をチェックする能力を持っていることにはなりません。このような人にチェックを頼むと、不要な修正を招いたりさらに悪い文章になる可能性があります。

現実には、翻訳が納品されても、依頼者がそのチェックに時間を割けない場合もあります。したがって、最初から優秀な翻訳者に依頼し、長い時間をかけて信頼関係を築くことが、なおいっそう重要となります。また翻訳者に、そのまま外部発表用として使える翻訳が必要なのか、あるいはチェック・編集にまず回されるのか、あらかじめ伝えておくべきでしょう。

法律上の要請があれば、翻訳者は、その知識が及ぶ限りにおいて訳文が原文に忠実かつ正確であるとうたった公正証書を提出できます。


フリーランス翻訳者の選び方

翻訳者を選ぶ際の判断材料としては、関連資格、経験、適切な情報源を備えているかどうか、発注に応じられるかどうか、さらに料金があります。また、翻訳者が顧客の母語を話す場合、円滑なコミュニケーションがはかれます。専門用語や知識が必要な仕事の場合、少なくとも関連分野の文書を訳した経験を持つ翻訳者を探すようにしてください。翻訳者を雇う際、どこかを仲介するより直接取引したほうが、費用が安く済んだり、また直に会話ができ相談内容が翻訳過程にきちんと反映されるなど、様々な面で有利です。翻訳が定期的に発生する場合、社内翻訳者を雇いいれるのも選択肢のひとつです。 


職業別電話帳やその他の名簿に多くの翻訳者が名前を載せていますが、それぞれの資格や言語運用力、専門知識を確認することが大切です。

  • よい翻訳者を知っている人はいないか、あちこち尋ねてみる。
  • 関連分野に出てくる翻訳文書に注意を傾け、可能ならば誰が担当したのか調べる。
  • 依頼できそうな翻訳者に過去の仕事で提出可能なものがないか尋ねてみる(原文と訳文の両方)。
  • 候補として選んだ翻訳者に、長さ半ページほどのサンプル文の訳を有償で依頼する。提出された訳文を、その言語を母語とする、よい言語感覚を持った人に見せる。
  • 発注者の母語ではない言語への翻訳者を探しており、発注者側でその言語を母語とするチェッカーを見つけるのが困難な場合は、翻訳者に対し、納品前にその言語を母語とする言語感覚のよい人から訳文をチェックしてもらうことを取引条件として明示する。
  • 翻訳者の能力を、内容照合や継続的なチェックにより確認する。

 

翻訳会社との取引

文書によっては、翻訳会社に頼んだほうがよい場合があります。翻訳会社は、翻訳の周辺に存在する諸々のサービスや品質管理を提供するとともに、図版の版下を作成する設備を備えていたり、ページ数がきわめて多い文書や、納期の短い仕事、またこみいった、あるいは特殊な内容の翻訳を処理する能力を持っています。翻訳会社のほとんどはフリーランス翻訳者および社内翻訳者を両方使っているので、それぞれについて資格や経験を問いあわせるとよいでしょう。また、翻訳に付加価値を与える他のサービス、例えば、編集や校正、DTPについても問いあわせてみてください。ただし翻訳会社は翻訳者に支払う料金にマージンを上乗せした金額を請求するので、翻訳者と直接取引するよりは高めになります。

フリーランスの翻訳者でも翻訳会社でも、一度優秀な翻訳者を見つけたら、同じ翻訳者を一貫して使うようにするとよいでしょう。貴社の文書の内容や、指定用語・文体・書式に慣れ親しむにつれ、翻訳の質がさらに向上します。また、高品質な翻訳を確保するには、その仕事の関係者全員が綿密に連絡を取りあうのが肝心です。

 

翻訳者によい仕事をさせるためのヒント

翻訳の仕事は、計画だった、準備周到なものであるほど、また発注者が協力的であるほど、よい結果を生むものです。下にそのためのヒントを掲載します。どれもそれほど時間や手間のかかるものではありませんが、余計な出費とご不満を防ぐ手だてになります。

 

1. 仕事を発注する前

 

  • 作成中の文書が将来翻訳に回るのがわかっているときは、はっきり、正確に書くように心がけて下さい。あいまいな点がないか特に注意を払ってください。事実関係の誤りや形式上の間違いがないかどうかという点にも注意いただければ、と思います。意味が通らない文章を意味の通る文章に訳すのは不可能です。原文に不具合があると、翻訳の速度が落ちるとともに、できあがりに影響が出ます。
  • 原稿を送る前に、選んだ翻訳者のスケジュールが空いているかどうか、必ず確認してください。
  • 発注に先立ち、全体の原稿−−または実際に参考にできる量の見本−−に、翻訳者が目を通せるよう計らってください。
  • 読みやすい原稿をご提供ください。原稿が手書きだったり、ファックスを何度も通されていたり、また字が細かかったりすると、翻訳者に余計な負担がかかるとともに、間違いが起こりやすくなります。
  • 外部発表用の原稿の場合、特に念入りな校正が必要です。この校正については誰が担当するのか(翻訳者側で行うのか、依頼者側で別に手配するのか)をあらかじめ決めておいてください。
     

2. 翻訳者に提供してほしい情報

  • その文書がどういう目的で翻訳されるのか(参考資料としてか、外部発表用か、会議用か、法廷に提出されるのか、など)、読み手は誰か(特定の国に向けたものか、国際的なものか、英語を母語とする人が読むのか、そうでない人が読むのか、その文書の内容または背景にある文化にどの程度通じている人が読むのか、など)、他の関係文書とどのように組みあわされて使われるのか、について、かいつまんでお知らせください。このような情報に基づき翻訳者は最適な処理方法と言葉遣いを選びます。
  • 翻訳不要の箇所にははっきり印をつけておいてください。
  • 用語を特定の基準にしたがい統一する必要がある場合(社内用語集や業界用語集など)、その旨お知らせください。可能ならば、原稿に使われている専門用語の定義を示すリストをご提供ください。たとえ英語、あるいは日本語どちらかのみのものでも、よい訳文の作成に役立ちます。各部署や肩書の正式名称や、特定の個人が言及されている場合、名前の読み方も含まれていれば、助けになります。(翻訳者がその分野を専門としている場合、訳文の言語で使われる専門用語に関しては深い知識を持ちあわせているのが普通です。用語集掲載のものとは異なる訳語の使用を翻訳者が提案したときは、ご検討いただければ幸いです。)
  • 背景となる情報をできるだけ多く翻訳者に提供してください(関係者の間で交わされた通信文、報告書、用語集、仕様書、参考になるウェブサイトの情報、以前翻訳された関連資料など)。両方の言語で用意いただけると助かります。翻訳者がニーズに合った訳文に仕上げるのに役立ちます。
  • 特定の文体にしたがう必要があれば、お知らせください(社内で文体が決まっている場合や、既存の文書に合わせる必要がある場合など)。
  • 文書のレイアウトについて条件があれば、くわしく指示をお願いします(図表の扱いや、図版の説明文の場所、文章を両言語で作成するためレイアウトをそっくりそのまま使う必要がある場合など)。訳文は原文より長くなったり短くなったりするので、レイアウトや活字の組み方が変わってくる場合があります。一定量を越えるレイアウトについては、通常作業料が別途かかりますので、翻訳者とご相談ください。
  • 特定のソフトウェアを使う必要があれば、お知らせください(指定ワープロソフトなど)。また、どのような形式で納品すればよいか指定してください(郵送、宅配便、速達、フロッピーディスク、電子メールなど)。
  • 日本語から英語への翻訳を依頼する場合、できれば原稿に登場する人の名前の正しい綴りを添えてください。日本語の名前には通常複数の読み方があり、翻訳者は最も可能性が高い読み方を推測できるものの、最初から正しい読み方が提供されていれば間違いがありません。また、上に書いたことですが、言及されている会社や団体で正式英文名称がわかっているものがあれば、それも添えてくださると助かります。さらに、中国や韓国の地名が登場する場合、その英文の綴りを提供いただければ納期の短縮につながります。
  • 英語から日本語への翻訳を依頼する場合、文書に登場する個人や会社、団体の名前を日本語でどう呼ぶのか、決まったものがあればそれを添えてください。ない場合には、英文のままとするのか、あるいはカタカナにしてその後ろに英文を括弧でくるんでおくのか、あるいはカタカナのみとするのか、指定書式がありましたらお教え願います。英数字の処理(半角か、全角か、ひとけたの数字のみ全角とするのか)、句読点(「、」と「。」か、「,」と「。」か、「,」と「.」か)、各種括弧の使い分け、ダッシュ、中点(「・」)、その他記号の使い方についても、希望があればお知らせください。また翻訳者は、文章の内容や用途、読み手に応じて「です・ます調」および「である調」の何れが適当か判断しますが、どちらか発注時に決まっていましたら、それもご指定ください。前後の文脈を十分提供してください。互いに関係のない項目を並べただけのもの、あるいは文章の一部を取り出しただけのものの場合、正確かつ適切な訳出が難しい場合もあります。
  • 図やイラスト、表、グラフも、(訳が不要の場合でも)原稿に添えてください。内容の理解に役立ちます。
  • 不明な箇所が見つかった場合に翻訳者が連絡を取れるよう、担当者の名前と電話番号を添えてください。原稿を書いた本人か、あるいはその分野の専門家が担当者なら理想的です。求めに応じ、意味のとりにくい部分や、業界用語の説明をお願いします。すぐれた訳文の確保のため、翻訳者と連絡を取りあうことにより、協力関係が翻訳の質に好影響を与えます。枚数の多い仕事や、入り組んだ仕事の場合、一度翻訳者と顔を合わせておく必要があるかもしれません。原稿および参考資料を返却する必要があるかどうか、翻訳者にお知らせください。

 

3. 締め切りと支払い方法

  • 文書作成の予定を組む際、翻訳に十分な時間を割いてください。
  • 締め切りについては、取りかかり前に翻訳者と話し合いの上、現実的な線に決めてください。翻訳者が必要な調査を行い高品質な訳文を作りあげられるよう、十分な時間をお願いします。原稿の作成にかかった時間と労力や、重要な文章だからこそお金をかけて翻訳に出すのだということを念頭に置いて、それに見合う時間を翻訳者にご提供ください。これがかなわない場合、翻訳者は徹夜をしたり週末も仕事をすることになり、その分料金が割り増しになる旨ご了解ください。
  • いわゆる「抄訳」は文書全体を訳すのと同じくらい時間がかかります。また何が求められているのか十分翻訳者に伝えられていなかった場合、偏った内容のものができる可能性があります。(抄訳の場合、通常翻訳の割増料金、または時間単位の料金が設定されますので、この点については翻訳者とよく話し合って下さい。)
  • その翻訳を参考資料としてのみ使うのか、あるいは外部への発表に使うのかを判断し、それにしたがって予算を組んでください。外部発表用の場合、読む人に合わせて原文に大きく手を入れなければならない可能性もあるので、参考資料用の翻訳よりも料金が通常高めです。
  • 支払いについては、前もって翻訳者と話し合い、決めてください。いつ支払われるのか(納品時、納品後30日以内、など)、また一括か、あるいは一部を前金とし残りを分割とするのか、などです。支払い方法(銀行振込、小切手、ほか)、割増料金(納期がきわめて短い仕事、複雑なレイアウト、特殊な体裁による納品、など)、取りかかってからその仕事がキャンセルになった場合の補償についても、話し合って決めてください。

 

4. その他

  • 翻訳者からの質問は、技量の不足を意味するものではない旨ご理解ください。内容をつかんだ上での質問は、プロ意識の証明です。答えられるものの場合、ご面倒でも回答をお願いします。
  • 安く済ませるために翻訳者に手抜き仕事を要求しないでください。長い目で見た場合、注文した側の損失になります。
  • 枚数の多い仕事を複数の翻訳者に分けて発注する場合、あとで用語・文体統一に多大な労力が必要になりますので、よくご検討ください。
  • 外部発表用の文章の場合、印刷に回る前に翻訳者にゲラ刷りを見せるとよいでしょう。間違いによる大きな出費が防げるかもしれません。
  • 仕事の完了後、特に--注文側と翻訳者の精一杯の努力にかかわらず--訳文の編集が必要だった場合に、翻訳者にそれをフィードバックしましょう。チェック入りの原稿を返却すれば、翻訳者は間違いや提案された内容から学ぶことができます。通常翻訳者は建設的な助言を歓迎するものであり、このように役立てれば将来翻訳の質が向上するとともに、コストパフォーマンスが上がるでしょう。


翻訳者の公的資格

各種専門学校や外国の大学には、翻訳のコースを設けているところがあります。また、翻訳の通信教育も盛んです。このようなコースを終了した人は、全く訓練を受けていない新人に比べれば、翻訳についての理解があると期待できます。しかし長年翻訳を職業としている人に比べると、経験の点で劣る場合もあります。大学などで語学や翻訳を勉強していなくても、各専門分野・技術分野でのキャリアを経てこの職業につき、成功している翻訳者も数多くいます。

国によっては、翻訳者として最低限の能力を持っているかどうか判断するための認定試験を実施しています。日本には政府による認定試験はありませんが、専門学校や団体主導で検定試験がいくつか行われており、合格証が発行されています。その信頼性・有効性は様々です。アメリカでは、米国翻訳者協会(American Translators Association)が認定試験を実施しています。オーストラリアでは全豪翻訳者・通訳者認定機関(National Accreditation Authority for Translators and Interpreters)が認定試験をいくつかのレベルで実施しています。

認定証の価値は試験方法がどの程度信頼性のあるものかで決まります。認定を受けていると主張する翻訳者に発注するときは、その認定を出した機関、英日・日英のどちらの翻訳の認定か、またどのレベルについて認定を受けているのかを尋ねることが重要です。認定証は翻訳者のプロ意識を示すものであり、世界的に見れば一般化しつつありますが、英語・日本語間の翻訳者の中に公式の認定を受けて実務を行っている人は今日ほとんどいません。しかしだからといって翻訳者としての水準を満たしていないというわけではありません。候補として選んだ翻訳者に、翻訳が必要な分野での経験についてお尋ねください。

 

翻訳者の職業倫理

翻訳者は、その職業倫理として一般に、仕事を通して得た知識を開示しません。また、手に負えないことが明らかな仕事は引き受けないことがあります(手に負えない、ということを少なくとも必ず依頼者に告げます)。他には、公正を重んじ、正確な訳出のため注意を最大限に払い、訳文の質に責任を持ち、専門知識・技能の獲得に努め、同業者を尊敬し協力し合うよう求められています。

翻訳者を雇う側にも一定の倫理上の義務があります。米国翻訳者協会の「職業行為・実務遂行規定」をご参照ください(英文のみ)。


機械翻訳システムの将来性

今日市場には、翻訳を自動で行うと謳っているソフトウェアが数多く出回っています。ヨーロッパ系の言語間の場合、目的が文書のおおまかな要点を取るという初歩的なものなら、用が足りる場合があります。それでも機械翻訳システムが最も役に立つのは、極めて狭い領域を扱った、繰り返しが多い文章か、あるいは規則にきっちり則って書かれた文章の場合です。あらゆる言い回し、あいまいさ、ニュアンスを全て併せ持った本来の文章・入り組んだ文章を翻訳ソフトにかければ、欠点がすぐ明らかになるでしょう。文学については言うまでもありません。機械翻訳の訳文には通常人間による前編集・後編集が必要なので、最初からプロの翻訳者に依頼したほうが--訳文の質の点では言うまでもなく--コスト面でも有利です。加えて、ヨーロッパ言語同士の場合に比べ日本語と英語は互いにきわめて異質であり、使われている文化もかけ離れているので、機械翻訳では問題点が多くなります。機械翻訳システムが人の手を必要とせず正確かつ高品質な訳文を作れるようになる可能性は、特に日本語・英語間の場合、まずないでしょう。

 

JATの会員資格

日本翻訳者協会(Japan Association of Translators、略称JAT)の会員には、日本語と他国語間の翻訳に関心を持つ人ならどなたでもなれます。法人会員制度はありませんが、翻訳会社の社員は個人資格で入会可能です。
 

 (「翻訳者とよいチームを組むために」 2002年11月14日改定、2012年12月13日一部修正)