特許翻訳の実務

作者:時國滋夫・沢井昭司

「特許翻訳は自分の仕事だ」と考える人には読んでもらいたい本で
ある。5章のうち、最 初の2章は、特許翻訳の流れやそれに関わる人たち、品質向上のために考えておくべき事柄、翻訳作業のやり方、直訳と意訳、機械翻訳、ネイティブチェック、 翻訳者が参照している文献などに触れている。特許翻訳をするときに、この本に記載されていることをやっているかどうか、すでに検討済みであるかを確認する ことは有意義だろう。残りの3章は、翻訳をする上で知っておくべき特許法規、請求項を翻訳するときに考慮すべき点、そして中間処理への対応について記載し ている。法律的なことは弁理士が考えるべきことで、翻訳者は何も知らなくてもいい、原文に書かれていることを訳していればいいと思っているのだとしたら、 この3章を読んだ後でもそう思うだろうか。特許翻訳文書は法律文書である。それなのに、つまり、翻訳した文書は法律的に解釈されるのに、法律的知識なしに 特許翻訳ができると考えてもいいんだろうか。

全体としては、現在の特許翻訳品質水準の大幅な向上をめざすべく、特許翻訳に関わるすべての 人に向けて書いた本である。皆さんのご意見・ご感想を待ちたい。ただ、これから特許翻訳を始める人に、どこをどのように訳せばいいかを記した本ではない。 すでに始めている人向けであるが、これから始める人もいずれここに記載された内容を知る必要はあるだろう。