第1位 讃井一郎さんへのインタビュー

Q1. JATコンテストに応募する前の翻訳経歴・経験について教えてください。

2017年から3年ほど翻訳スクールの実務・出版のクラスを受講しました。JATのコンテストは2018年から6年続けて応募しています。毎回、結果発表のあとに入賞者の方の訳を参考に自分の訳を見直し、審査員の方の講評を読んで理解の深さ、正確さに感嘆していました。

翻訳についてはまだ勉強中であり、仕事もトライアルの経験もありません。あと2、3年実力をさらにつけてトライアルに挑戦して仕事につなげたいと考えています。

Q2. この原文の翻訳作業にどのように取り組みましたか?

今回の課題は、カナダ政府のAIに関する文書だったので、関連するニュース記事、日本政府のAIに関するサイトなどをネットなどで調べて、使用される語彙や言い回しを確認しました。訳出の途中でも、実際にどんな言葉が使用されているのかその都度ネットなどで検索して選んでいきました。

あとは何度も訳文を読み返して、意味があいまいだったり、意味が通らないところを検討して手直しを繰り返しました。

Q3. この翻訳で最も苦労した点はどのようなことでしたか?

語彙や言い回しを調べて選択するところです。AIについては、ネット情報が豊富にありますが、どれが最適なのか使用例を見比べて適切と思われるものを選んでいきました。さらに政府の法令での言い回しも一つ一つ適切なものを使うように努めました、今回の課題は、言葉の選択という点では、これまで以上に難しかったように感じました。

Q4.ご自身の翻訳で、特に満足できた表現や部分はありますか?

残念ながらあまりありません。いまからでも最初から見直したいくらいです。しいてあげるとすれば、Improving accountabilityの上の段落、The idea…の文です。原文を前から順に訳すことで、次文の、The more risks… の文とのつながりがよくなっていると思います。

Q5. 後から考え直して、訳文の表現や部分を変更したいと思うものはありますか?

今回の訳で、逆接でないところで接続詞の「が」を使っているところが4、5か所ありました。順接でつないでも、句点で切ってもよいと思います。

さらに、審査員の方から指摘のあった、Did you know? を「あまり知られていないこと」とした訳です。奇をてらい過ぎて、的を射ていない工夫だと痛感しました。疑問文より肯定文にして意味をはっきりさせたいと考えたのですが失敗でした。原文をしっかり吟味した上で訳出することを常に心掛けたいと思います。

Q6. コンテストに参加して得た利益(賞品以外)は何ですか?

まだ翻訳の仕事をしていないので、すぐに実益につながりませんが、実力は徐々に上がっていると感じています。将来的にはこれまでの参加歴も含めて仕事でアピールしていきたいと思います。

Q7. 将来の翻訳コンテストの参加者に対して、何かアドバイスはありますか?

私の経験上のことですが、訳文の意味が通らない、または、おかしな表現のところは、まず原文に戻るのが第一と思います。読みやすくしようとして訳を直すと、十中八九、原文と意味が異なってしまうと思います。これは、私自身も気を付けなければいけないところです。

Q8. コンテストを楽しめましたか?

はい。毎回そうですが、入賞者の方の訳文に触れたり、審査員の方から鋭い指摘をいただいたりして、刺激をもらっています。今回は望外の高い評価を頂きましたが、今後もいっそう自分の訳に磨きをかけていきたいと思っています。

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第2位 古賀彩美さんへのインタビュー

Q1. JATコンテストに応募する前の翻訳経歴・経験について教えてください。

通信講座などで翻訳を勉強し、開業して2年ほど経ったタイミングでの応募でした。JATコンテストへの参加は初めてでした。

Q2. この原文の翻訳作業にどのように取り組みましたか?

AI関連法に関する知識があまりなかったので、まずは背景となる情報を収集しながら、課題文に類似する文書をなるべく数多く読むようにしました。一通り訳出が終わった後、締め切りまで数日残っていたので、少し寝かせてから見直すというサイクルを何度か繰り返しました。

Q3. この翻訳で最も苦労した点はどのようなことでしたか?

「ensure」は訳しにくい単語の定番だと思いますが、今回は何度も出てきたので特に苦労しました。

Q4.ご自身の翻訳で、特に満足できた表現や部分はありますか?

Artificial Intelligence and Data Act (AIDA) – companion documentの部分は、「companion document」をそのまま「付属文書」とせず、実際に文書の内容を確認して具体的な訳語を当てられたので良かったと思います。

Q5. 後から考え直して、訳文の表現や部分を変更したいと思うものはありますか?

硬い表現や翻訳調の漢語が多くなってしまった点を反省しています。特に「非差別的」や「容易化」はいかにも翻訳調なので、もっと一般的な表現にすべきでした。

Q6. コンテストに参加して得た利益(賞品以外)は何ですか?

講評をいただいたことで、自身の訳文を客観的に見つめ直し、弱点を洗い出すことができました。普段の仕事ではここまで細かくフィードバックをいただく機会がなかなかないので、大変勉強になりました。

また、コンテストへの参加を機にJATに入会させていただき、ありがたいことにプロフィール経由で複数の翻訳会社からご連絡をいただいています。

Q7. 将来の翻訳コンテストの参加者に対して、何かアドバイスはありますか?

実際の業務と違って、自分の専門分野でなくても気軽に参加できるのがコンテストの良いところだと思います。自身の可能性を広げる意味でも、積極的に挑戦されることをおすすめします。

Q8. コンテストを楽しめましたか?

はい。とても勉強になりましたし、今回の経験を生かして仕事の幅も広げていけると思うので、応募して良かったです。

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