(English and Japanese below have different content)

報告者:鈴木のぶみ

2024年10月19日(土)に大阪で「KAT/JATPHARMA合同2024年秋関西セミナー」が開催されました。JATPHARMAはJAT分野別分科会の一つの製薬翻訳分科会で、医学や薬学関連の翻訳者のグループです。Kansai-Area Translators (KAT)はJATの地域活動委員会の一つで、関西で分野を問わない通翻訳者向けのイベントを開催しています。

会場は新大阪駅東口すぐのエブリグランデ新大阪で、参加者は約30名。関西だけでなく九州や名古屋からの出席者もいました。

プログラムは5部構成です。

1. 自分の特徴を生かした「差別化」と仕事を呼び込むプロモーション戦略

渡邉ユカリさん(英日・日英法務・ビジネス翻訳者)

継続的に受注を確保するためには自分をクライアントや翻訳会社に知ってもらう必要があり、そのためにはブランド化・差別化が必要。独自性を打ち出すヒントを紹介してくださいました。たとえば、①リピートをもらうには喜ばれることをする(スピードアップ、翻訳+αを打ち出す、他の翻訳者を紹介する)、②ウェブサイトを作るならキーワード(個人翻訳者、都道府県や市町村レベルで所在地)を入れて検索してもらえるように、③元々の魅力に何か足す、④成果・努力はちゃんとアピール(LinkedInに英語でポスト)。直取引先や国内外の翻訳会社を増やすヒントは、どの分野で役立ちそうです。今後、メディカル翻訳者向けの戦略について聞きたいとの声も。

2. 医薬翻訳の新刊案内とミニワークショップ

森口理恵さん(英日・日英医薬翻訳者)

新著『学び方と訳し方のコツを知る 医薬翻訳教室-ワンランク上の訳文にする70のポイント』(イカロス出版)の紹介。前作『まずはこれから!医薬翻訳者のための英語』は医薬翻訳に必要な用語、表現を豊富に紹介、医薬翻訳者のバイブルと言われていますが、参照すべき資料や翻訳演習に十分ページを割けていませんでした。新著はその部分を補いつつ、医薬翻訳講座を丸ごと書籍化したような充実ぶりです。翻訳志望者、現役翻訳者、翻訳会社の人たちに読んでほしいという森口さんの話を聞いた後、新型コロナに関する一般向け文書の英訳に挑戦しました。和気あいあいかつ真剣な討論後に発表と解説。事実確認の重要性、時制、単複やコロケーションの注意点は、医薬以外の翻訳者も勉強になったとのこと。AI翻訳の訳文と比較すれば、まだまだ人間ががんばる余地があると確認できました。グループワークのおかげで、その後のランチでも知らない人と話が弾みました。現地販売分は完売したそうです。私もサインを頂きました!

3. ボイスオーバーウイルス!

スミス・ヘンリーさん(日英医薬翻訳者、研究者)

21秒の日本語ニュースに英語字幕をつけるグループワークショップ。テーマはマダニによる動物の感染症。主語、語句の順番や表現を検討したり、アプリで再生しながらアナウンスの時間を調整したりして、あっという間に時間が過ぎました。アンケートに回答しながら深掘りできるようになっており、文章の流れや強調すべきことの重要性を再確認できる構成はさすがでした。

4. Medical writing with AI

小泉志保さん(日英医薬翻訳者、研究者)

翻訳者から大学院に進学した経緯や活動、今後の抱負などを話してくださいました。また、日本メディカルライター協会での活動から、AIを用いたメディカルライティングの動向について解説していただきました。薬事申請では、データプラットフォーム+AIを活用して、エンジニアとライターが協力して複数の言語で文書を作成するプロジェクトが複数の国で始動しているとのこと。原文と訳文が同時に作られるなら、どうやって正しさを担保するのか、翻訳の仕事はどうなるのか、考えさせられました。

5. 第二言語で専門用語を説明しよう

ベン・トンプキンスさん(日英医薬翻訳者)

自分に割り当てられた医学用語(心臓、糖尿病など)を第2言語でグループに説明して当ててもらうゲーム。第2言語でのアウトプットの難しさを体感しました。医療はどの人もかかわることなので、一般に使われる医学用語を説明するのは医薬分野でない人にも楽しめました。

今回のセミナーはKATとJATPHARMAが初めて共同開催したイベントでした。医薬分野以外の参加者や翻訳志望者、学習者も楽しめる内容になっていたと思います。ワークショップが多く、活発な意見交換ができたので、ランチタイム、懇親会も笑い声が絶えず話が尽きないものになりました。懇親会は20名が参加して、翻訳に関する相談やここだけの話、次のイベントの企画などが飛び出し、盛会でした。

JATのイベントは会員以外でも参加可能ですが、会員になるとセミナーの割引、プロフィール公開(取引先獲得の可能性大)、セミナーの動画視聴し放題などの特典があります。ご興味があればまずはセミナーにお越しいただくか、JATへの入会をご検討ください。


Impression: Richard Sadowsky

JATPHARMA has always been one of JAT’s most active special interest groups. If I may reminisce for a moment, the day before IJET-30 in Cairns in June 2019, I saw that the Pharma SIG was holding a meeting and decided to join, even though my own field of translation is business and general. The meeting was quite a pleasure, with a workshop-style atmosphere. (The level of activity must have something to do with Ben Tompkins being involved.) If you have ever attended a JAT Project or IJET where Ben was presenting, you will remember, like I do, being treated to a productive brainstorming session with others around your table.

Ben (chair of the long-awaited Fukuoka IJET in May 2025) wanted to come up to the Kansai area to host another day session recently, so we organized a meeting with an expanded purview beyond medical/pharmaceutical topics—we being the Kansai Area Translators committee...Shoji Miyata (also on the JAT Board), Nobumi Suzuki, and myself, with input from Yukari Watanabe in Nagoya (JAT VP).

The session (https://jat.org/events/event/kat_and_jatpharma_joint_fall_2024_meeting) attracted a roomful of nearly 30 participants, largely native Japanese speakers. The session was a great deal of fun. I learned things, interacted with others, and enjoyed the dinner afterwards with food and drink, too. I always make it a point to step out of my comfort zone to learn new things and meet people. That was the idea, and the time spent was well worth it.

And for a supercharged version, be sure to attend IJET in Fukuoka on May 10 & 11, 2025! But before that, don’t miss Project Nagoya (https://jat.org/events/event/project_nagoya_2024_2) on Sunday, November 24, 2024!