私は2019年時点で会員になってまだ2年目でしたが、思い切って2019年~2021年期で理事を務めたことはとても良い経験になりました。

在宅翻訳を専業にすると、企業では日常的に起こる、仲間と連携して物事を進めるという経験の機会が(仕事内容や業務形態により状況は異なるものの)少なくなりがちです。そうした環境を好んで在宅翻訳を仕事にする方もいるとは思いますが、人と一緒に話を進める仕事は、自主勉強する中で得るものとはまた別の、話し合うからこそ出てくる思いつきや新しい発見があります。

理事はSIGs/RACsや会員獲得、各種渉外リエゾン、財務、バックエンドのITサポートなど色々な業務を分担することになりますが、担当の範囲でも影響の大きなものは自分だけで判断を下さず皆で話し合いをします。私自身自分の強みを生かせると思って財務担当に立候補し、業務範疇で小さな改善をしてはいますが、たとえばOGMでの報告資料など自分では十分と思っていてもほかの理事と確認したときに情報が不足しているように見えるなど一人では気づけない点もあり、学ぶことが多かったです。

翻訳や通訳の仕事にクライアントから直接的に受けるフィードバックも自己の成長になりますが、個人で事業をする上ではコミュニケーション力や自発性、営業力といったソフトスキルも重要です。フリーランスには色々な形態があるとはいえ、商店の個人経営とは異なり、在宅翻訳者は企業勤めの方と比べると人との交流は少なくなり、対人スキルの成長は狭まりがちです(コミュニケーションの仲立ちという点で在宅翻訳者より対人交流の多いフリーランス通訳者も、日常的な業務連携の機会は少なくなるのではと思います)。このような成長の機会を日々に取り入れる上でも、JAT理事を経験することはとても有益だと思います。

若手の方々の中には、自分には理事なんて務まらないんじゃないかと思う人がいらっしゃるかもしれませんが、私も期が重なったほかの理事の方に色々と助けてもらいながら担当を2年無事務められました。JAT理事は業界の経験年数を問われません。むしろフリーランスになりたての人こそ、早くに経験してみて欲しいと思います。

宮原健