2017年11月26日に開催された「JATPHARMA IN 京都~医薬翻訳関西セミナー」について報告させていただきます。

会場はキャンパスプラザ京都。参加者は34名で、そのうち1割前後が英語のネイティブスピーカー、残りが日本人でした。基本的にネイティブは英語で、日本人は日本語で話していて、国際的な雰囲気でした。

上の写真は当日の配付資料で、さらにダウンロードできるPDFファイルの案内がありました。帰宅後にダウンロードしたところ、72ページもある情報満載のスライド資料でした。

セミナーは大きく4つに分かれました(敬称略)。

1. CIOMS英訳のコツ~基本から応用まで~(小泉志保)

まずは医薬翻訳の基礎から。初心者向けとも言われるCIOMSの英訳を通して、MedDRAや基礎知識、よく用いられる表現などを学びました。

事前課題があって、提出した人の訳から匿名で紹介がありました。自然で文脈に適した訳文がとても参考になりました。

事前課題を最後まで通したのち、「病名を突き止めろ!」という応用編に入りました。NHKの「総合診療医ドクターG」のように臨床症状から病名を探りつつ、その症状を英訳していきます。英語学習に推理小説のようなおもしろさが加わって楽しく勉強できました!

 

2. 用語集とうまく付き合う方法(ベンジャミン・トンプキンス)

JATPharma(ジャットファーマ)というのは日本翻訳者協会の製薬翻訳分科会のことですが、この分科会が以前に「製薬専門日英翻訳ハンドブック」を作成しています。協会の会員はダウンロードできますし、冊子版は非会員でも購入できましたが、現在、この新しいバージョンを作成中とのことです。もうすぐ入手可能になるそうで、そのお知らせと、入手可能になった場合、どのように翻訳支援ツールに組み込めるかの紹介がありました。

また、用語をどのように自分でも集めていくのか、管理していくかについて知ることができました。仕事やこのようなセミナーで出会った用語を手間暇かけず簡単に記録に残せるようなシステムを自分なりに構築しておくことは大事ですね!

 

3. 日英翻訳ワークショップ:翻訳作業の実況中継(1)(2)(Tony Atkinson、森口理恵)

90分のランチ休憩を自由に取ったのち(参加者何人かと一緒に取った方が多いと思います)、日本語をネイティブと日本人がペアで実際に英訳したものを並べ、ディスカッションするワークショップが行われました。課題は2つあり、1つ目は糖尿病について、2つ目は薬価算定の基準についてでした。

どちらの課題もよく疑問に思う単語や言い回しが取り上げられていて、それをネイティブと日本人2人の訳例を同時に見て考えることができたので大変有益でした。例えば「など」をどこまで、どのように訳すか。お二人のアプローチは異なることが多く、それぞれからどうしてその訳文にしたかの解説がありました。訳文は参加者からの意見や質問に基づく改良も取り込み、さらに磨き上げられてまさにタイトル通り「翻訳作業の実況中継」でした。

特に2つ目の課題はかなり難解な原文でしたので、それが最終的に(ある意味原文よりも明快な)すっきりとした翻訳ができあがったときには爽快でした。翻訳の苦しさと気持ちよさを味わったワークショップでした。

その後、翻訳者が陥りやすい文法上の問題について、クイズ形式で学びました。こちらは参加者がスマートフォンやタブレットなどを使って会場で指定されたサイトに入り、表示されている問題に回答します。3~4択問題で、各選択肢を選んだ参加者数の分布が会場のスクリーンに表示される何とも現代的な取り組みでした。自分の回答が正解かどうかだけではなく、他の参加者もよく引っかかったのか、多くが正解したのかがわかり、大変盛り上がりました。

 

4. 夕食懇親会&ミニ勉強会

夕食を各自購入し(アルコール可でした)、会場で食べながら参加者との交流、景品付きゲーム大会、事前募集のあった日頃の翻訳に関する疑問に関する勉強会が行われました。この時間になると、退席した参加者も多かったのですが、だからこそ密度が濃く、ざっくばらんな情報交換ができたと思います。

例えば「濃度」に対する “level”と “concentration”の使い分け。Googleなどでヒット数を比べてみればよいのでしょうが、特にネイティブの方が色んなコロケーションを考えてくださり、イメージをはっきりさせることができました。有益なサイトの紹介もあり、これからの仕事で使ってみたいと思える技や考え方を学ぶことができました。以下は紹介のあったサイトの一部です。

LIFE SCIENCE DICTIONARY (LSD)

The University of Manchester Academic Phrasebank

 

以上の通り、医薬翻訳にドップリ浸ることのできた大変有意義な一日でした。当日のご登壇者様、ボランティアの皆さま、参加者の皆さまに感謝申し上げます。参加できなかった方はぜひ次回お越しください!初学者からベテランまで、どんな方でもウェルカムなセミナーです。

笠川 梢 (Kozue Kasakawa)