Finalists (English to Japanese)
The following five entries (#23, #28, #32, #49, #81) have made it to the final round.
Entry 23
支払レート
部分構造合成法の手法によって翻訳の生産性を解析するにあたり、まず支払レートの算出方程式から始めよう。弁護士と同様に、翻訳者も顧客に直接的に係る事項に時間を使うが、同時に直接的ではない活動にも時間を費やす。しかし、時間単位で請求するので事前に支払レートを決定できる弁護士とは異なり、翻訳者の多くは単語数に基づいた請求になるので、ある仕事ついての作業が終了するまでは支払レートを知ることができない。
支払レート方程式(BR)は(1)式で表される。
(1)BR=H0 x R
式中HOは単語数で表される時間あたりの生産量、Rは単語あたりの平均レートである。HOとRは翻訳の生産に影響を与える最も重要な2個の変数である。すなわち完成され、かつ提出可能な翻訳を単位時間あたりの単語数で表した翻訳速度と、単語あたりの単価(セント)で表された翻訳した単語数に対して支払われる金額である。翻訳の生産性を時間あたりの単語数で考えるのは間違いであり、生産性は貨幣価値で表わされることを肝に銘じよう。
この事実について良く考え抜いておくことには、心理的に重要な利点がある。それは、編集に要する時間をもめた概算の最終支払レートが既に頭にあるので、編集作業も支払いの対象になっていることを自覚していることである。逆の言い方をすると、翻訳作業中には、この草稿で支払いレートを稼いでいるのだと思えるが、編集作業はなんらの稼ぎにもならない(最終の単語数には変化がないから)と考えることもできる。しかし、編集が支払い対象の作業ではないと考えるとすると、編集は心理的には楽しい作業とはならないであろう。もしも、翻訳は早いが、編集は遅い(または編集が苦手な、または嫌いな)翻訳者なら、翻訳作業を外部委託した方が良い場合の好例となる。外部委託した編集者に単語数に基づいて支払う場合には、前記のBR方程式に当てはめる単語あたりの平均レート(R)から編集者に支払うレートを差し引いておく。さて、編集作業を外委託することに決めた場合にはどうなるか:
例えば、自分で編集する場合のBRが時間あたり500単語X0.15ドル=75ドルで、編集をしない場合の翻訳速度は時間あたり650単語に増えるとしょう。もし、優秀な編集者を0.15ドル – (75ドル ÷ 650) = 0.15ドル - 0.115ドル= 0.035ドルの対価で探せるなら、編集者を活用すべきである。自分が編集よりも翻訳が好きであったり、あるいは編集者を活用することによって翻訳物の品質(その結果、多分、単語あたりのレートも)の改善が図れる場合には、特にそうである。この計算の背景にある理論は: 自分で編集しない(従って、時間あたりの単語数は元の500ではなく650である)のであるから、同額の75ドルを稼ぐためには、単語あたりのレートは0.115ドルであればよい(すなわち、単語あたり0.115ドルで650語ならば、時間あたりの稼ぎは同額の75ドルになる)。しかし、顧客には依然として0.15ドルを請求しているので、0.035ドル(0.15ドル-0.115ドル)のとりを持つことになる。文書の洗練度や編集度を向上させる結果として、単語レートを上げることができると考えられる投資については、0.035ドルまでは損することなしにその編集担当者に支払うことができるのである。
支払いレートは、自分の収益力と関係している。支払レートを上げるために投資する時間、(翻訳するため時間を奪うことで)総所得に対してマイナスの影響を与えることによりある程度相殺され、また支払レートを上げるために投資した(消費した)お金(音声認識ソフトウェア、コンピュータ支援翻訳ツールや生産性を促進するような事務用イスなどへの投資)は、純利益にマイナスの影響を及ぼす。経済的観点(ライフスタイルに対する影響は無視するとする)からいえば、投資の結果上がった支払レートが、これらのマイナスの影響を上回る場合にのみ、このような時間やお金に対する投資が正当化されることを意味している。
Entry 28
請求レート
ビルディング・ブロック・アプローチを用いて生産性のモデルを作ろうと思うが、まずは請求レートを算出するための方程式から話を始めよう。弁護士と同様に、翻訳者は直接顧客に帰属する時間を費やし、その上、翻訳の周辺活動も行う。一方で、弁護士と異なるところもある。弁護士は時間数で請求金額を決めるため、事前に請求レートを設定できるが、翻訳者は単語数で請求するのがほとんどで、どんな特定の仕事の請求レートであれ、その請求レートを知るのは仕事が完了した後になるということだ。
請求レートを算出するための方程式は次のように表される。
(1) BR=HO×R
HOは1時間当たりの単語総数で、Rは1単語当たりの平均レートである。この2つは最も重要な変数で、生産性に影響を与える。つまり、納品できる翻訳完成物を作りだすスピード(1時間当たりの単語数で表される)と翻訳した単語の対価(1単語当たりセントで表される)である。注意してほしいのは、生産性は1時間当たりの単語数で表すことができると考えるのは間違っているということだ。生産性は金銭の観点から適切に表現できる。
金銭の観点から生産性についてじっくり検討するのは、心理的にも重要な利点があるからだ。つまり、編集に費やした時間をすでに考慮に入れた大雑把な最終請求レートを使うことで、編集に対しても報酬が支払われていると理解するのだ。逆に言えば、翻訳はするが編集には何も報酬がないとすれば(最終的な単語数は同じ)、初期ドラフト請求レートを稼いでいると考えることもできるかもしれない。しかし、編集を報酬のない作業と考えれば、心理的には楽しいものではないだろう。だからこそ、翻訳は早いが、編集は遅い(または、編集は苦手、または編集は嫌いといった)人であれば、編集作業を外注した方がいいかもしれない。編集者に単語数に基づいて支払いをするのであれば、単語レートから編集者に支払う金額を控除するだけで、BR方程式に当てはめるべきレートがわかる。編集を外注するかどうかを決めるのは次のように考えてみれば良いだろう。
自分で編集をする場合の請求レートが1時間500ワード×0.15ドル=75ドルで、編集をしない場合のスピードが1時間あたり650ワードの場合、0.15ドル-(75ドル÷650)=0.15ドル-0.115ドル=0.035ドルで質の高い編集者を見つけることが出来るのであれば、編集者に外注すべきである。特に、自分で編集するよりも翻訳をするのが好きであったり、編集者を使うことで(自分の単語レートで)翻訳の質を向上させることができたりするのであれば、なおさらである。この計算の背後には次のような論理がある。つまり、自分で編集作業をしない今や(1時間当たり以前は500語を翻訳したのに、結果として650語を翻訳することができるようになった)、1時間で同じ75ドルを稼ぐためには、1単語あたり0.115ドルのレートで純益をあげれば十分である(つまり、1単語あたり0.115ドルで650語を翻訳すれば、1時間で同じ75ドルを稼げるということだ)。顧客には0.15ドルで請求をしているので、0.035ドルは自由に使うことができる。翻訳物がより洗練され、編集された結果、単語レートを1セントでも上げることができると思うごとに、その分だけ損失なく編集者に支払う報酬をあげることができるのだ。
請求レートは翻訳者の収益力と関係している。とはいうものの、請求レートを上げることに投資する時間はどんなものであれ、(その時間だけ翻訳から離れることになるから)総所得を押し下げるし、(音声認識ソフトウェア、コンピュータ支援翻訳ツール、生産性を高める事務用の椅子といった)請求レートを上げることに投資する(費やす)金はどんなものであれ、純所得を押し下げる影響を与えることになるだろう。つまり、こうした投資を経済的な観点から(ライフスタイルへの影響は無視して)正当化できるのは、こうした所得を押し下げる影響よりも請求レートが結果として上がるほうが大きい場合だけである。
Entry 32
翻訳者の実労時間給(BR)
ここでは、ブロックをひとつずつ積み上げていくようにして、翻訳者の生産性を導き出していく。まず、実労時間給を求める方程式からはじめる。弁護士の仕事と同じように、翻訳者はクライアントから請けた仕事に直接的に帰する作業と、それ以外の雑務的な仕事の両方に時間をかける。弁護士は実労時間で請求書を起こすので、あらかじめ時間当たりの請求額を設定するのだが、一方、ほとんどの翻訳者は単語あたりいくらで請求書を計算するので、その仕事が終わるまでは実労時間給がわからないのが実情である。
実労時間給を求める方程式は、
BR = HO × R
である。
ここで、HOは1時間当たりの訳出語数(hourly output in words)、Rは単語単価の平均値(the average per-word rate)である。
翻訳者の生産性に影響する最も重要な変数が2つある。ひとつは、納品可能な完成品としての翻訳を仕上げるスピードで「時間当たり何単語」と表現される。もうひとつは、翻訳物への対価で「単語当たりいくら」と表現される。注意すべき点は、時間当たり何単語翻訳したかで生産性を考察するのは間違いで、生産性はお金の単位で表わすのが適切であるということだ。
ここまで考えておくと精神的にとても有利なことがあり、それは、あらかじめ編集作業も含めた最終的な実労時間給を、おおまかに知っていれば、編集作業にかかる時間にも報酬が支払われているとわかることだ。逆に、翻訳作業の最初の下書きには報酬が支払われるが、編集作業はただ働きであると考えることも可能だが(最終的な報酬額は同じであるが)、編集は無償の仕事と考えると、それは精神的に楽しい作業ではなくなる。そこで、もし、翻訳の仕事は早いが編集作業は遅い(あるいは編集が苦手または編集自体が嫌い)という人であれば、編集を下請けに出すという選択肢を考えてみるべきだ。単語数で編集者に支払うとすれば、その単価をもとの単語単価から差し引くだけで、BR算出の方程式に入れるべき単語単価が得られる。編集を下請けに出すかどうかを、どのように決めるのか、以下に例示する。
自分で編集も行った場合のBRが、1時間当たり500単語×0.15ドル=75ドルで、編集を除いた翻訳速度が1時間当たり650単語だった場合、もしも優秀な編集者を、単語当たり0.15ドル-(75ドル÷650)=0.15ドル-0.115ドル=0.035ドルで見つけられるなら、下請けに出すべきである。特に、自分で編集するより翻訳作業のほうが好きな人や、編集者を雇うことで翻訳の品質を高めることができる(ことによれば単語単価を値上げできる)場合は、なおさらである。ここで、上記の計算の意味するところを説明する。1時間で同じ75ドルを稼ぐためには、もう編集作業はしなくていいのだから(つまり結果的に1時間当たり、もともとの500単語に対して650単語翻訳しているから)、単語当たり0.115ドルだけ得られればよいことになる (すなわち、単語当たり0.115ドルで650語翻訳すれば、1時間当たり同じ75ドルの稼ぎとなる)。それでもクライアントには単語当たり0.15ドルを請求しているわけだから、差し引き0.035ドルの余剰が生じる。より洗練され、きれいに編集された文書を納品できることで単語単価を値上げすることが可能な場合は、その割り増し分以内は、損失なしで編集者への支払いに上乗せすることができる。
実労時間給は収益を得るための原動力であるのだが、実労時間給を上げるために時間を投資すれば、多かれ少なかれ(翻訳の時間を奪ってしまうので)総収入を引き下げてしまうので、上がった時間給による収益増と相殺になってしまうし、また、実労時間給を上げるためにお金を投資すれば(浪費すれば)(例えば音声認証ソフトウェアやコンピューター利用翻訳ツール、生産性を高めるオフィスチェアー)その分、純利益を引き下げてしまう。ということは、時間やお金の投資をするには、(ライフスタイルへの影響を無視するなら)その引き下げの影響よりも、実労時間給上昇の収益への貢献度が大きい場合にのみ、経済的に妥当なのだ。
Entry 49
請求レート
積み木アプローチを用いて生産率を図式化します。まず請求レートを求める方程式から始めましょう。弁護士と同様、翻訳者はクライアントから依頼された仕事そのものに時間を費やすかたわら、周辺作業にも時間を使います。ただし、弁護士は時間単位で顧客に請求するので請求レートを事前に設定することができますが、大半の翻訳者はワード数ごとの請求になるため、ある特定の依頼における請求レートがいくらになるのか、その仕事が片付くまでは分かりません。
請求レートを求める方程式は以下のようになります。
BR = HO × R
HOは1時間あたりの総翻訳ワード数、Rは1ワードあたりの平均レートを表します。生産率を左右する最も重要な変動要素が二つあります。一つ目はクライアントへ最終的に提出が可能な翻訳を完了させるまでのスピードで、時間あたりのワード数で求められます。二つ目は翻訳によって得られる対価で、これはワードあたり何セントかで表すことができます。時間当たりのワード数によって生産率を求めるのは誤った方法です。生産率はあくまで金銭的な項目によって的確に表されるものだからです。
以上を考慮し、校正にかかる時間をもすでに含んだ大まかな最終請求レートを設定することで、校正作業にも対価が支払われるという認識を持つことが心理的に大きな効果をもたらします。逆に言えば、翻訳作業時には草稿に対する請求レートを得ているけれども、校正作業では1セントも稼いでいないと考えることもできます(最終的な請求レート値は同じです)。しかしそれが無給の作業だとみなせば校正は心理的にそれほど楽しいものではなくなります。つまり、もしあなたが翻訳は早くできるけれども校正に時間がかかるようなら(または校正が不得手であったり、校正そのものが嫌いなら)、校正作業を外注に出すことを検討したほうがよいでしょう。外注先の校正者にワードあたりのレートで料金を支払う場合は、あなたのワードあたりのレートからその金額を差し引きます。BR 方程式に加えなければならないレートを換算するためです。校正を外注に出すかどうかの検討手順は以下のようになります。
あなたのBRが自身による校正作業も含めて1時間あたり500ワード×0.15ドル=75ドル、校正作業を除いたスピードが1時間あたり650ワードだったとします。そして、ワードあたり0.035ドル(0.15 – ($75 ÷650) = $0.15 - $0.115 = $0.035)で引き受けてくれる能力のある校正者が見つかったなら、校正作業は外注に出すべきです。自分で校正をするよりも翻訳をするほうが好きだったり、校正者を使うことによって翻訳の質を(そしておそらくワードあたりのレートも)向上させることができる場合は特にそうです。上記の計算式の裏にあるロジックはこうです。あなたはもう校正作業をしないので(そして結果的に1時間あたり500ワードだった以前に比べて650ワードの翻訳が可能になったので)、1時間で前と同様の75ドルを稼ぐためには1ワードあたり0.115ドルの実収を得ればいいことになります(すなわち、1ワード0.115ドルのレートで650ワードの翻訳をすれば、同時間内で同額の75ドルを稼ぐことになります)。一方、クライアントには引き続き0.15ドルのレートで請求しているため、残りの0.035ドルが自由に使えるお金としてあなたの手元に残ります。校正を経て翻訳をより磨かれたものにし、その結果あなたのワードあたりのレートを引き上げるためにも、校正者へ支払うレートはこの金額までは自分の身銭を切ることなく上げることが可能です。
請求レートは収益力に結びついています。しかし、請求レートを上げることに費やした時間は、(翻訳にかける時間を食ってしまうゆえに)実収にいくらか負の影響を与え、その効果を相殺してしまうかもしれません。同じ目的で投資(もしくは出費)した金額(音声認識ソフト、翻訳支援ツール、もしくは生産性向上のために購入したデスク用のイスなど)もまた、実収に負の影響を与えかねません。すなわち、このような投資は、結果として増した請求レートがこれら負の影響よりも大きかった場合にのみ、経済的に正当化されるのです。
Entry 81
請求レート
構成要素ごとに生産性を図式化していこう。まず、請求レートの方程式だ。翻訳者には弁護士と同様に、直接クライアントのために使う時間と、周辺活動に使う時間とがある。弁護士は時間単位で請求するため、請求レートも事前に設定している。一方で大半の翻訳者は単語あたりで請求するから、完了まではその仕事に対する自分の請求レートがわからないのだ。
請求レート(billable rate=BR)の方程式は次のようになる。
(1)BR=HO×R
HOは1時間あたり(hourly)にアウトプット(output)される総単語数、Rは平均の単語あたり料金レート(rate)である。この2つが、生産性を決める二大要素になる。すなわち、完成し納品できる状態の翻訳を仕上げるスピード(単語数/時)と、仕上げた翻訳に付けられる値段(金額/単語)である。時間あたりの単語数で生産性を測るのは誤りだ。生産性というのは、金銭的価値でこそ正確にとらえられる。
このように考えておくと、心理的な利点がある。編集時間も計算に入れた大枠の最終請求レートが念頭にあるため、編集作業にも対価が支払われているという意識が持てるのだ。これとは逆に、翻訳で稼いでいるのは初稿に対する請求レートであって、編集作業では1円も稼げない(編集しても仕上がる量は同じだから)、という考え方もできる。だが無給だと思ったら、編集はあまり楽しい作業にはならないだろう。であれば、訳すのは速くても編集に時間のかかる(または編集が不得意な、あるいは嫌いな)人は、編集作業をアウトソースするのが良いかもしれない。編集者に単語あたりで料金を支払うなら、その額を自分の単語あたりの料金レートから差し引いて、BRの方程式に代入する料金レートを導き出す。編集作業をアウトソースすべきかどうかは、例えば次のように決められる。
自分で編集した場合のBRが500語/時×$0.15=$75で、編集なしの場合の翻訳スピードが650語/時という人は、$0.15-($75÷650)=$0.15-$0.115=$0.035で良質な編集者を見つけられるならアウトソースするべきだ。自分で編集するより翻訳している方が好きだったり、編集者を利用することで翻訳の質を(そしてできれば単語あたりの料金レートも)上げられるなら、なおさらアウトソースするのが良い。この計算のロジックを解説しよう。1時間で同じ$75を稼ぐためには、自分で編集をしないのだから(つまり1時間に500語でなく650語訳せるから)、単語あたり$0.115稼げれば良い($0.115/語で650語訳せば、1時間で同じ$75稼ぐことができる)。クライアントに請求する単語あたりの料金レートは$0.15のままだから、$0.035の余裕があるのだ。納品する翻訳の仕上がりが良くなることで見込める単語あたり料金レートの上昇額の範囲なら、編集者への支払額を引き上げても損失は出ない。
請求レートは、稼ぎ出す力の核となるものだ。とはいえ、請求レートを上げるために時間をかければ、(翻訳に時間を取られるため)総収入はある程度減少する。音声認識ソフトウエアやCAT(コンピュータ翻訳支援)ツール、生産性向上のためのオフィスチェアなどに費用をかければ、手元に残る額が減る。つまりこのような投資は、こうしたマイナスの幅よりも請求レートのプラスの幅が大きくなる場合にのみ、(ライフスタイルへの影響は別としても)経済学上正当化されるのである。